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連載コラム

その26 本名 鈴木ともや


爪噛み太郎

俺はみんなにそう呼ばれている。

俺の名前は爪噛み太郎じゃない
勝手に人の名前を決めやがって

あいつらみんな嫌いだ

爪噛み太郎は今日も爪を噛んでいる
噛む部分もないのにカリカリ噛んでいる
爪噛み太郎は不条理や嘘や矛盾に敏感でそれを見つけるとストレストで爪を噛んでしまう。

高校3年生 クラス替えをして3週間経った。久々に学校に来てみると、
胡散臭いありえない青春ドラマみたいに「なにしてたんだよー!みんな心配してたんだぞー!」と誰も声をかけてこない。みんな勉強してる。
別にいいのだ、あんなもの俺たちに青春のあり方を決めつけて押し付けてくる洗脳ドラマだ。ありえないフィクションだ。だが多くの人間にそれが青春のイメージとして刷り込まれていく。

茶番だ、クソ野郎。

爪噛み太郎の席は一番後ろだった。座って退屈そうに爪を噛んでいると
「爪って美味しい?」
っと隣の席の奴が話かけて来た

内心『うるせぇ!美味いから噛んでんじゃねーよ!ぼけが!』

っと言いたいが押し殺して。

「いや、あんま、、っ!!!!??」

答えかけた時、爪噛み太郎は衝撃を覚えた。

なぜならその話しかけて来た男の爪が
爪噛み太郎より短かったからだ。

爪噛み道15年この道のプロの自覚はある、だからこそ分かる。

この爪は相当噛んでるやつの爪だ。
しかも、相当な力で何度も痛いところまで噛みすぎている。
見たことがない、、、、

爪噛み太郎はとっさにその男の顔を見た、そいつはクラスの変人、総理だった。

そして、「俺もよく噛むんだけど、あんまり美味しくはないなぁ。タンパク質、爪の味って感じで。けど、他の爪噛んでる人に聞いたことがないから聞いてみたかったんよね」

『は!?なんの理由だ、調査でもしてんのか?』

と思いつつも、「そうやなぁ、美味しくはないな」

と返した。

『こいつのことは知っている、中学も同じだからな。いつも人を小馬鹿にしたような目をしていると思ったら、たまにびっくりするくらい本質的な発言をする。中学の時も道徳の時間で先生に説教したり、急に学校からいなくなるし、喧嘩もよくする、家からチューブのタルタルソースを持ってきてお腹が空いたら授業中吸ったり、トイレに行くと言って、体育館で彼女とイチャこいてたり、自由の極みのような男だ。だが俺には分かる、こいつはかなり物事に敏感で傷つきやすい。そして、闇を抱えている。俺には分かる。
なぜならその爪が物語っているからなぁ!!!!!!!!』

爪噛み太郎は総理の目を見て
「爪見て総理の性格、少しわかった気がするわ。じぶん傷つきやすいやろ?」

と聞いた。

『多くの人が自分が弱いということを言いたくない。特に総理のような強い男に憧れている人ほどなぁ!!!!!!ははははぁ!!言え!!いきって、「いやっそんなことは、ないよ」って引きつった笑顔でいいやがれ!この腐れポンチ理論やろうが!』

「せやねんー。もう人生しんどいわ。」

『!!???!?はぁ!?そこは素直に認めるんかい!悔しくないんか?!お前にプライドとかないんか!?なんやその、悟ったようなあっけらかんとした顔は!』

爪噛み太郎は「やっぱりそうかー
、爪噛みの宿命やなぁ、、」と返した。

すると総理が間髪入れず

「ってことは、爪噛み太郎も傷つきやすいんか?」と聞いた。

『ギックゥ!!なんやお前、頭の回転早いんか!本音をいえば、いや!俺は傷つきやすくなんてないわぁーい!』

「いっ、いやっ!ぴぁぷ!いや、そっそっんなことはないと思う」

『おおおお!!!い!!やり返されてるやないかぁぁぁごおおおおおおおおおおおおおおおお』

総理は爪噛み太郎を優しい目で見ていた

そして、「俺も爪噛み太郎みたいにタフになりたいわ」

と言った。

この数秒間の会話で爪噛み太郎は
総理には何かかなわないことを悟った。

たった2、3ラリーの会話で
この男の器を知ったのだった。

そしてこの会話をきっかけに
爪噛み太郎と総理の運命は急激に引き寄せられていくのだった

映画はまだ流れ続けている

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