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連載コラム

その6 敵将討ち取ったり


《敵将討ち取ったりー!!!》

2人の小学生がゲーム「三国無双」に夢中だ

敵をバッサバッサとなぎ倒し爽快な気分になれる
無双ゲーと呼ばれるタイプのゲームだ
ハードはPS2だ。

このゲームの舞台は今から1700年前の中国
主人公が敵兵を切って切って切りまくって天下統一を目指すゲームだ。

敵を切れば切るほど、見方の隊長に褒められて、ゲームはどんどん面白くなっていく。

ぶっ続けで5時間、2人は飽きること無くそのゲームを続け、目の上がジンジンしだした頃に休憩し、その日はそのままバイバイをした。

友達の家でゲームをしていた総理が一人で帰り道を歩いていると、前からおじさん敵兵が歩いてきた。
なんとなくだが、思い切って刀はないけどそのおじさんとすれ違うときに
「ザシュッッ!!!!」

っと言っておじさんを切る真似と効果音を口で表現した

おじさんは「いててててっ」と言って笑っていて
総理も笑っていた

それから三歩半歩いた時

『けどもし、これが本当の戦場だったらどうなるのだろう』
そんな疑問が急に頭をよぎった

あのおじさんは死に、俺は人殺しになるのか?悪いことをした人になって警察に捕まるのか?

いや、違う。俺も敵を殺したからどこかの偉い隊長に「よくやった」と褒められるはずだ

だけどよく考えると、今の日本の社会は違う。
昨日も殺人事件が悪いニュースとして取り上げられていたし、人を殺すなんて悪いことだとみんな思ってる

だけど1700年前の中国や、おだのぶながやとよとみひでよしやとくがわいえやすがいた今から500年前の日本も
だいにじせかいたいせんをしていた70年前の日本も
人を殺すことができる人がヒーローだったはずだ。
100人殺すより、1000人殺した方がいい
1000人殺すより10000人殺すほうがいいのだ!

そっかなるほど

価値観は変わるのか。急に手のひらを返したように。
分度器みたいな感じで一年に10度くらい変わっていって、18年たったら気付けば180度変わっていて、さらにそれにから18年経つと価値観は180度変わって、また昔と同じになるのかな。総理は感覚的にそんな風に感じた。もちろん一年に何度変わるかは分からないけど。

そうやって考えると、今の常識は未来には無いのかもしれない。もっと言えば明日には無いのかもしれない。
ゲームばっかりやってる子はだめだっていう今の基本的な常識が
ゲームをよくする子は、偉い子だ、将来性のある子だ、という常識に変わるのかもしれない。ゲームのうまい人がお金を稼げる、プロゲーマーみたいな職業ができるかもしれない。
ランドセルは男が黒、女が赤という常識も変わるのかもしれない。
男がピンク、女が黒でもいい時代が来るのかもしれないし、
同性愛の人が結婚できる社会が来るかもしれない、
みんな絶対に変わらないと思っている憲法9条だっていつか変わるかもしれない。

そんなことを思いながら石ころを蹴っていた。

家に帰ると遠い国でテロが起きているというニュースを見た。彼らは「正義のために」戦っている。三国無双と同じだ。
現代でも同じことが起きているのだ。
常識は時代によっても変わるし、国よっても変わる
もっと言えば、時間とともに変わるし、場所によって変わるんだ

三国無双というゲームはそんな大切な事を教えてくれているんだ、深いゲームだなぁ。

っと思いながら、総理は晩御飯を食べた。

その日夜ご飯で食べた牛の生レバーは、13年後日本では食べることが禁止されることになる事を彼はまだ知らない。

次の日総理は学校で担任の小林に、終わりのホームルームで

「常識は時間で変わるし、場所によっても変わるから、みんなこれから常識という言葉を使う時は、「今日の日本の常識は」っていう風に言いましょう!ってみんなに言って!」と嬉しそうにお願いしていた。

担任の小林は頭を抱えながら
「それだれから聞いたん?」聞いた

小学2年生で“常識”と言う言葉を使う子はほとんどいない。

総理は「三国無双ー!!!」と言った。

それを言われた瞬間の小林の困った表情を総理は見逃さなかった。

小林は、はいはいっと言わんばかりに
「わかった、わかった」
と言い、総理を席に返した。

総理は嬉しそうに「約束ね!!!」と言って席に戻った
だが、席に着く前に抑えきれず、爆発したように叫んだ

「敵将討ち取ったりぃぃ!!!!!!!」

小林は白目を向いていた。

映画はまだ流れ続けている。

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