スポーツ&ミュージック&カルチャーを応援するイベントPUB、FootRock&BEERS

連載コラム

その11 世界一の涙


夜25時前

アパレルのバイトの前日 お前は泣いていた

いままでないくらいに、すっごく泣いていた、泣いて叫んでいた、俺なんかの何倍もの声量で。
声にならない泣けび声が街を震わしながら響いていた

ただ泣いているだけなのに
まるであなたはこの街を壊してしまうんじゃないかと思った。

その泣けび声で、この街を壊して、その大粒の涙で街を溺れさせてしまうんじゃないか
その声に強く当たった人は強烈な感情で心を壊されて死んでしまうんじゃないかなって思った。

カバンを地面に投げ捨てて、中の物は全部割れた、携帯も、手鏡も、化粧ポーチの中身も、全部壊れて破片になった

お前の涙は止まることがなく、泣けび声は止まることはなかった

だけど、その泣けび声には
お前の心の繊細さと優しさと悲しみと悔しさと夢と哀愁と若さと彼氏への気持ちと自分への自信のなさと、誰よりも優しくて明るいお前が入っていた。

街が揺れている気がしたし、空気が切り裂かれる音がした。

俺は思った。

お前の涙はすごい
こんなに正直に泣ける人を俺は見たことがない
まっすぐに、なんの曇りもなく大きな声で純粋に泣ける人を見たことがない
それがかっこよかった、憧れてしまうほどに。そして、その涙一粒の中にお前の人生が詰まっていた。

声が枯れてもお前は叫ぶことをやめない。それを見てまたかっこいいと思った。
ふつうは声が枯れたらみんな叫ぶのをやめるからさ。

声にならない泣けび声が街に響いている
声にならない泣けび声が俺に響いている

こんな純粋な涙を、こんなかっこいい涙を、こんなに優しい涙を初めて、しかも俺は眼の前で見た。

ありがとう

お前の涙は世界一の涙や、ずっとこれかも。

俺もそんな涙を流せるような人になるで。

泣くなんてださい?それは違う
純粋に泣けるやつはかっこいい

そんな事を思ったんだ

この日を境に総理は泣くという事に関しても語れる男になった。
かっこいい涙とは?そんな問いに答えられる経験を、語れる経験をこの日総理はしたのだ。

映画はまだ流れ続けている
壊れそうなくらい優しい泣けび声をBGMに

page top